ば、妖琴師と過ごす夜しか思い付かず、もう桜の木に行くのはやめようと心に決める。
だと言うのに、何故自分は今ここにいるのか。
気づいたらいつものように桜の木の下に来ており、目の前には琴を構える妖琴師の姿があった。
我に返ったのなら踵を返すべきだろう。そう思い、足を動かせば不機嫌そうな声が引き止める。
「何処へ行くつもりだ」
前までは「早く去れ」と言っていた口が言う言葉には到底思えない。
「明日は早いのでな。今日は早々に退散するつもりだ」
「ほう。ここまで来ておいて今更そう言うのか」
「元々来るつもりがなかった。何故今ここに自分がいるのかも不思議だ」
素直にそう言えば、妖琴師は目を細めて笑う。
「ならば、早く去るが良い。囀る虫に聴かせる音はここにはない」
「手厳しいな。では、そうしよう。……あぁ、お前には申し訳ないが、暫くはここには来ないつもりだ」
有言実行をもとにキッパリ宣言すれば、彼は何故かおかしそうに笑う。
「いいや、君は来るさ。私が頼まずとも、君は来るだろう。明日の君は黙ってそこに佇み、自分の愚かさに嘆く事になる」
「……」
「どうした?去るのではなかったのか?何故いつまでもそこにいる」
無言で佇めば、嘲笑混じりに言われてハッと我に返る。暫くはここには来ないと心に決めながら、久しぶりに何の子守唄もないままに寝所に潜った。しかしながら、朝が来るまで目は覚めたままで、意識はハッキリとしているものの、身体の疲労は昨日までが嘘のように溜まっていた。重たい身体を引きずりながら、博雅と神楽を連れて都の鬼退治へと出向く。以津真天に二軍の引率を頼み、自身は術を使って周囲を探る。そんな中、不意に袖を引っ張られ、私は背後を振り返った。
「晴明、今日は博雅に任せて帰った方が良いと思うの」
「神楽……私は」
「式達も晴明が体調が悪い事を見抜いてる。そんな状態で戦っていたら、怪我をしてしまうかもしれないでしょ?」
そう言われて式達に向ければ、戦いながらも以津真天が静かな目でこちらを見ているのが分かった。見抜かれて
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